Natural Refrigerants
自然冷媒とは?自然冷媒ごとの特長とCO2冷媒冷凍機について
環境保護のため、代替フロンから自然冷媒へ移行が進んでいますが、そもそも自然冷媒とは何なのでしょうか?なぜ代替フロンは環境に悪いと言われるのでしょうか?
ここでは環境意識の高いヨーロッパでCO2冷凍機を生産するSCM Frigo社の代理店であるエムタス・レフ社が解説します。
特定フロンや代替フロン(HFC)とは?
なぜ冷やせるの?
冷凍・冷蔵の技術は今や私たちの生活には欠かせないものですが、どのようにしてものが冷えるのかご存じでしょうか?
昔は、夏の暑い日には玄関先に打ち水をして涼んでいました。何故水をまくと涼しくなるのでしょうか?その理由は、水が水蒸気に変わるときに熱を奪うこと(気化熱)で周りの気温が下がる現象が発生するからなのです。冷蔵・冷凍技術はこの技術が応用されています。
フロンの発明と環境問題
1860年代に冷蔵庫が発明された当初、冷媒はアンモニアが使用されていましたが、爆発の危険性や人体への有害性、刺激臭等の問題がありました。そこで1930年代に、フロンが発明されました。フロンは自然界に存在しない物質で、燃えにくく、分解しにくく、液化しやすく、人体に無毒なため、当時は画期的な発明とされ、冷媒に非常に適している物質だという事で広く普及しました。
しかし、1980年代、フロンにはオゾン層を破壊するデメリットがあることや、実際に南極上空にオゾンホールが発生していることが分かり、フロン削減の動きが出ました。 そして、1987年にカナダのモントリオールで、フロンをいつまでにどれだけ減らすかを決めた「モントリオール議定書」が日本を含めた世界各国で批准されました。
特定フロン、代替フロンの使用規制が始まる
モントリオール議定書で特定フロンの削減が決まったため、オゾン層を破壊しない代替フロン(HFC)が開発され、HFCの使用が広がっていきました。しかし、そのHFCにもオゾン層を破壊しない代わりに温室効果が高いという問題がありました。
結局HFCも削減しなければならない状況となり、モントリオール議定書に特定フロンに加えHFCの削減を盛り込んだキガリ改正(2019年)が行われました。 特定フロン(R22)は2020年に廃止となり、代替フロンも地球温暖化係数(GWP)が高いものは段階的な規制が始まっています。現在は、環境負荷の小さい自然冷媒に変わりつつあります。
自然冷媒とは
自然冷媒とは、空気、水、二酸化炭素、アンモニア、プロパンなど、自然界に存在する物質を使った冷媒のことです。もともと自然界に存在している物質なので、温室効果は非常に低く、環境への影響が小さい特徴があります。
二酸化炭素は温室効果があるのに、冷媒に使ってもいいの?
二酸化炭素は地球温暖化、というイメージがあるかもしれませんが、それはあまりにも二酸化炭素が大量に排出されているから問題なのであって、本来は二酸化炭素自体は自然界に存在するものである上に人間を含む動植物の呼吸、炭酸水、ドライアイス、産業用途等広く身近に普及しており、それほど温室効果が高い物質ではないのです。
自然冷媒の種類と特徴
空気冷媒
主な用途|超低温冷凍機、急速冷凍装置
- 【特徴】
- ・無害・無臭
- ・可燃性なし
- ・直接空気を冷却することで、冷却器・配管が不要なシンプルな構造が可能
- ・-60℃前後の超低温領域において使用できる
- ・超低温領域以外ではエネルギー効率が悪い
- ・今後の普及に期待される
CO2冷媒
主な用途|業務用冷凍機、給湯用ヒートポンプ、エアコン、寒冷地暖房、自動販売機等
- 【特徴】
- ・無毒、無臭
- ・可燃性なし
- ・フロン系冷媒と比較し、給湯温度でのCOPが高い
- ・単位体積当たりの運ぶ熱量が高く圧縮機や配管を小さくできる
- ・超低温での冷却は不可
- ・運転圧力が高く、機器に高い耐圧性が必要
水冷媒
主な用途|廃熱を利用した冷却設備
- 【特徴】
- ・無害・無臭
- ・可燃性なし
- ・主な動力源はポンプで圧縮機が不要
- ・太陽光や廃熱を利用して、冷水を製造できる
- ・エネルギー効率がそれほど良くない
- ・0℃以下の冷却には使用できない
アンモニア冷媒
主な用途|産業用冷凍機、産業用冷蔵庫
- 【特徴】
- ・毒性、刺激臭あり
- ・可燃性、爆発性あり
- ・フロン系冷媒と比較して、冷凍・冷蔵・空調用の温度でのCOPが高い
- ・フロン系冷媒より熱伝達率が高いので、使用冷媒量が少なくて済む
- ・二酸化炭素と組み合わせることで高効率化が可能
- ・銅系統材料が腐食により使用できない
- ・防爆設備や除外装置が必要
プロパン冷媒
主な用途|家庭用冷蔵庫、自動販売機など
- 【特徴】
- ・無臭
- ・可燃性あり
- ・二酸化炭素冷媒を上回る給湯効率
- ・R22冷媒と同等以上のエネルギー効率
- ・可燃性があるため、ガス漏れが生じた場合、火災や爆発の重大事故発生の恐れがある
代替フロン規制と補助金で加速する自然冷媒への動き
モントリオール議定書により、日本はCFC(特定フロン)を2005年までに生産・消費ともに全廃しました。さらにHFC(現在主流の代替フロン)も生産・消費の削減が始まっており、2036年までに2011〜2013年の平均を基準として85%削減することが目標になっています。
日本政府としても自然冷媒化を推進するために補助金制度で後押しを行っています。
我が国の代替フロン削減スケジュール(消費量)
出典:経産省資料より代替フロンと比較したCO2冷媒のメリット
代替フロンと比較して、CO2冷媒には数多くのメリットがあります。
メリット1 環境に優しい
種類 | ODP | GWP | 安全性 等級 |
|
---|---|---|---|---|
HCFC | R-22 | 0.055 | 1810 | A1 |
R-123 | 0.02 | 77 | B1 | |
HFC | R-134a | 0 | 1430 | A1 |
R-410A | 0 | 2090 | A1 | |
R-32 | 0 | 675 | A2L | |
HFO | R-1233zd | 0 | 1 | A1 |
R-1234yf | 0 | <1 | A2L | |
R-1234ze(E) | 0 | <1 | A2L | |
HFCとHFO混合冷媒 | R-513A | 0 | 631 | A1 |
自然冷媒 | CO2 | 0 | 1 | A1 |
NH3 | 0 | 0 | B2L |
1996年に特定フロンの全面廃止が行われた後は、オゾン層への影響が小さい代替フロンHCFCが使用されるようになりました。
しかしこれもオゾン破壊に影響があるため2020年に廃止に。
現在オゾンへの影響がない(ODPがゼロ)HFCが主流ですが、温暖化への影響が非常に高い(GWPが高い)ため、問題視されています。
自然冷媒は、オゾンへの影響がなく(ODPがゼロ)温暖化への影響も非常に小さい(GWPが0~1)ため、環境に優しい冷媒です。
メリット2 省エネ
代替フロンR22の冷凍機に比べCO2冷凍機の方が年間で14%の省エネとなります。長期的に見てランニングコストの削減が可能です。
メリット3 フロン排出抑制法の対象外
フロン排出抑制法の対象外のため、フロン利用時に義務付けられる漏洩点検の報告は不要となります。
メリット4 自然冷媒補助金
自然冷媒を用いた冷凍機の導入の際には環境省等からの補助金制度が用意されています。 (詳しくはこちら)
メリット5 環境経営
環境問題が社会的課題となり、SDGs活動が企業の社会的責任として注目される中、導入企業にとっては環境意識の高い消費者や雇用人材の獲得も考えられます。すでに物流倉庫、スーパーマーケット、コンビニエンスストア、ドラッグストアへ導入されています。
メリット6 持続可能性
我が国の代替フロン削減スケジュール(消費量)
出典:経産省資料より日本政府はキガリ改正の2036年目標実現に向けたHFCs(代替フロン)への取組みを以下の通り定めています。
- 自然冷媒機器の導入拡大
- HFCs生産・消費のフェーズダウンの着実な実現
- HFCs排出ゼロを目指した機器使用時漏洩対策及び機器廃棄時徹底回収
- 温暖化係数の低い冷媒(グリーン冷媒)の開発推進
ノンフロン機器の主流化を政府が求めている以上、今後代替フロン使用の規制が強化されていくことが予想されます。
CO2冷媒機器であれば、持続可能性があります。
弊社CO2冷凍機のシリーズ紹介
- キューボ2スマートシリーズ
- 冷却能力
- 2.3〜8.0kw
- キューボ2プラスシリーズ
- 冷却能力
- 1.9~11.0kW
- ブースターシリーズ
- 冷却能力
- ~60.0kW